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2008年Art Baselレポート 

チェルシーオーナーのアブラモビッチ氏も来場 

スイス・バーゼルに6万人来場 

 世界最大規模のアートの祭典、現代美術ならびにコンテンポラリーアートの国際見本市「Art Basel」が6月3日~8日まで開催された。主催者は、売上金額を公表していないが、今年も世界の一流ギャラリー300社、人手6万人、そして205機のプライベート・ジェットがバーゼル空港に飛来した。
 
 ブルームバーグ・ニュースでは「Art Basel, Buoyed by Global Buyers, Escapes U.S. Economic Woes」と言ったヘッドラインで、米国経済の軟調をヨーロッパ、ロシア、中東と言った地域のバイヤーが吹き飛ばしたとレポートしている。(2008年6月9日)

米国人バイヤーが少なかったのはサッカーのせい? 

 今年のArt Baselの特徴として一様に指摘されるのが、米国人バイヤーの減少である。そもそもバーゼルにはホテルが3,410室しかないのに、今年は世界でサッカーのワールドカップとオリンピックに次ぐ第三番目の動員者数を誇るスポーツ・イベント、サッカーの欧州選手権『EURO 2008』の開催にかち合って、ホテルが取れなかったせいにしたがる関係者もいないわけではない。
 
 しかし、例年なら買い手不在に陥ってもおかしくない程の米国バイヤーの減少を、欧州や旧ソビエト圏、中東やアジアのバイヤーがカバーして余りあった模様であり、出展ギャラリーは一様に満足したコメントを残している。
 
 「今年は米国からのビックプレーヤーがほとんど来ませんでした。しかし、まったく期待外の国、英国やスペイン、ポルトガルなどの新しいお客さんを見つけることが出来ました。(ベルリンのギャラリーEsther Schipper)」
 
 「ヨーロッパからの引き合いがいつになく強かったです。また、ロシア、ウクライナ、中東、ポーランド、トルコと言った国の新しいお客様もできました。それにインドやシンガポール、マレーシアと言った国から来ているバイヤーも見かけました。(ロンドンのディラーSadie Coles)」

アブラモビッチ氏は約15億円の買い物? 

 このような状況を象徴するかのように、会場に花を添えたのは、俳優のブラッド・ピット氏ではなく、むしろカタールやドバイの王族、そしてロシアの大富豪ロマン・アブラモビッチ氏(英国のプロ・サッカー・チーム『チェルシー』のオーナー)であった。このような人々は、オークションで作品を買うことがあっても、本来、アート・フェアに来るようなタイプでは無かった。
 
 実際、アブラモビッチ氏は、5月のNYで120百万ドルもの買い物をしたばかりであるのに、この時も14百万ドルもするジャコメッティーの作品を買って行ったとか、別のブースでは30百万ドルも使って行ったとか、たいそうな話題をふりまいていた。フェアの関係者は、アブラモビッチ氏のようなタイプの富豪がフェアに足を運ぶようになることを大いに期待していると言う。

衝動買いは減った? 

 もう一つ、今年のArt Baselの特徴として言われているのが、バイヤーが吟味して買っていると言う点である。これも、アメリカ人不在の影響か? 「例年は、最初の30分間で展示している作品の8割がアメリカのお客さんに売れてしまうのですが、今年は、まだ働かされています。(NYのギャラリーPer Skarstedt。アート・ニュースペーパー紙2008年6月6日)」
 
 アート・ニュースペーパー紙はこのような状況を「Good deals, but buyers take longer to make up their minds(商売は繁盛。でも、バイヤーは購入を決めるのにいつもより時間をかけている)」と指摘し、「Market keeps moving, but the brakes start to go on(マーケットはまだ動き続けているが、ブレーキが利き始めたのでは)」と先行きの不安を示唆するような見出しでコラムを執筆している。
 
 最後に同フェアでの主な注目作品を紹介する。マルボローギャラリーでは、フランシス・ベーコンの三連作を80百万ドル。アクアベラギャラリーでは、ルシアン・フロイドの「Girl in Attic Doorway」を12百万ドル。ヘリー・ナームド・ギャラリーは、ブース全体を18点のミロ作品でかため(ほとんどが借り物であるがうち4点は売り物で)1点当たり3百万ドル。ガゴージャンは、杉本博司の海景シリーズの大版7点セットを8百万ドル。LAのギャラリーブルーム・アンド・ポーは、村上隆の特大サイズのスタチューを8百万ドル。ジュネーブとNYに拠点を置くジョン・クルーガー・ギャラリーは、アルベルト・ジャコメッティの彫刻を14百万ドルで販売していた。(写真は、ヘリー・ナームド・ギャラリーのミロ作品の展示風景と、村上隆の河童を模した大型彫像作品)

取材協力:秋山敏郎(あきやまとしろう)
 1958年生まれ。北九州市出身。83年上智大学哲学科を卒業し、旭通信(現アサツーDK)国際部に入社。89年に退社し、西ドイツケルン大学経済学部経済学科に入学。東欧のマーケティングを学ぶが、東西ドイツの統一に伴い学科が消滅。翌90年ミュンヘン大学美術史学科修士課程に編入。株式会社トシ・インターナショナル代表取締役として、約30社の海外オークション会社の日本代表を務め、日本で随一の海外オークション・エージェント事業を展開。株式会社Art Investment Bank代表取締役として、コンテンポラリーアートの投資アドバイザリーサービスを提供。

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